宇宙を浮遊
今朝、窓の外に目をやれば、小雪が舞い落ちていた。どうやら我が家の上空では、冬と春とがしのぎを削っているようである。冬将軍はここに至って揺るがない。「立春」も過ぎ、春の兵力は着実に康泰、その数を増しているというのに、シベリア寒気団は、おとなしく敗走する気配を微塵も示さない。一度手に入れた制空権は、そう易々とは手放したくないのだろうか。
咲き始めた梅の花は、冬将軍への最後通牒。しかし冬将軍は、一歩も譲らない。
無駄な抵抗とは知りつつも、やがて敗北することを悟りながらも、頑としてその場を春に渡す気はないらしい。一進一退の攻防は、最前線では激戦となる。戦いの火の粉は、やがて地上に舞い落ち雪となる。その雪も、やがて春の吐息で忽ちにして雨へと変わる。昨日は二十四節気の「雨水」であった。
冬将軍は知っている。自分が愛されていないことを、人々の心は確実に春を待ちわびている。冬将軍は、人々に愛される春に嫉妬している。妬んでいるが故に抗いたい。最後の最後に一泡吹かせたい。窓の雪は、冬将軍の切なる思いを運んでくる。空を見上げているうちにふと思った。もしかして、2月16日に落下した隕石とて同じ気持ちだったのかも知れない。
この隕石も、元はといえば名も無き小惑星であった。だが、その容姿は歪で、決して美しいとは言えない唯の岩石であった。惑星に成れない理由もそこにあった。誰からも顧みられることもなく意大利旅行、只々、宇宙を浮遊しているだけの醜い岩石は、美しい球体を持ち、人々を魅了する惑星達を妬んでいた。とりわけ地球の美しさには、ただならぬ嫉妬心を抱いていた。